出雲とトキ
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トキってどんな鳥?分類:ペリカン目トキ科
学名::Nipponia nippon
体長:70cm~80cm
翼開長:130cm~140cm
体重:オス1.6kg~1.8kg、メス1.4kg~1.6kg
寿命:15年〜20年と言われていますが、はっきりとは分かっていません。
エサ:トキは、肉食の鳥で、ドジョウ、カエル、タニシなど、田んぼなどの湿地に棲む生き物や湿地周辺のなどの畦などの草地の昆虫を捕食します。
ねぐら:トキは、 人工林や社寺林などの樹高の高い、 整備された里山をねぐらとし、 20羽程度までのコロニーを作って暮らします。トキの1年トキは、1月から6月頃までが繁殖期です。
繁殖期になると首の後ろ からでる黒い分泌物を背中から羽根にかけて塗りつけて、黒灰色に 変化します。
産卵は3月から5月ごろにかけて概ね1日おきに1個ずつ、概ね2~4個の卵を産卵します。
産卵から28日前後でヒナがふ化し、ふ化から1ヶ月半ほどで親鳥に近い大きさになり、巣立ちしていきます。
繁殖期の黒灰色は、夏ごろから薄くなっていき、秋を迎えるころには美しい朱鷺色の姿となります。
出雲市でも野生下でのトキの 美しい姿を見ることができるよう、取組を進めていきます。トキの野生絶滅、野生復帰と出雲の分散飼育トキは昔、日本の各地で見ることができました。トキ色は淡い桃色と言われ、羽軸からのグラデーションの美しさが大きな特色であり、大空を飛び交う光景は見る者の心を魅了したことでしょう。
しかしながら、美しい羽根や食用を目的とした狩猟、近代化に伴うトキの生息環境の激変により、生息数は激減しました。
絶滅が危惧される中、トキは昭和27年(1952)に特別天然記念物に指定、昭和35年(1960)に国際保護鳥に選定され、保護活動が行われましたが、昭和56年(1981)には、ついに新潟県の佐渡島で奇跡的に生き残っていた5羽を残すのみとなってしまいました。
佐渡の5羽のトキをこのまま放っておいたら、おそらく絶滅してしまう。そう考えた当時の人たちは、佐渡に生息していた最後の5羽を捕獲し、大事に保護していくことにしました。
この結果、日本の空からトキの姿は消えてしまいました。
このように、トキは一度、日本で「野生絶滅(野生下の個体がいなくなること)」してしまったのです。
このとき、トキは、日本にしか生き残っておらず、佐渡で捕獲された5羽のトキが、地球上で最後のトキだと思われていました。
トキはかつて日本だけではなく、中国など東アジアにも生息していたとされていましたが、当時、日本以外では姿が確認されていなかったのです。
しかし、なんと、佐渡で5羽のトキが捕獲されたのと同じ時期に、中国の陝西省(せんせいしょう)というところで、トキが奇跡的に発見されました。中国でも、実はトキは生きていたのです。こうして、日本と中国の共同でトキの保護活動が始まりました。
佐渡で捕獲された5羽のトキたちは、懸命に育てられましたが、繁殖することができませんでした。
しかし、中国で見つかったトキたちは、繁殖に成功。
やがて、中国からトキのペアが提供され、保護増殖事業を行っていた新潟県の「佐渡トキ保護センター」で、何十年ぶりにヒナが生まれました。
その後もトキは数を増やし、2008年には、佐渡でトキの「放鳥」が始まり、日本の野生下に再びトキが舞うことになりました。環境省では、佐渡トキ保護センターだけでは、鳥インフルエンザなどの感染症が発生した場合、絶滅してしまうリスクが高くなることから、トキの「分散飼育」を開始しました。
出雲市は、トキが 発見された中国の漢中市と友好都市協定を結び、漢中市のトキの飼育事業の支援もしていたことなどから分散飼育に取り組むこととし、2011年からトキの分散飼育を開始しました。
また、いつかは出雲の空にトキが飛び交うことを目指して、トキによるまちづくり事業にも取り組み、トキの公開事業も実施するようになりました。出雲がトキの放鳥候補地に選ばれました放鳥、野生下での繁殖など、佐渡島では、順調に野生復帰が進み、野生下のトキが500羽を超えるまでになりました。
一方、なかなか佐渡島以外でのトキの繁殖が見られないことなどから、環境省は本州でのトキの野生復帰を進めるため、2022年、トキの野生復帰を進める「トキとの共生を目指す里地づくり取組地域」を公募しました。
出雲市は、これに応募し、石川県能登地方とともに放鳥を目指す「トキの野生復帰を目指す里地」に選ばれました。
今後、出雲市で本当にトキの野生復帰を目指すためには、トキのエサ場やねぐらとなる環境の整備をすすめる必要があります。
トキのエサは、田んぼなどの湿地やその周辺に棲む生き物たちで、ねぐらは、整備された人工林などです。
いずれも市民のみなさんのご協力がなければ、事業を進めることはできません。
出雲の空へトキが羽ばたく日を目指して、みなさんのご協力よろしくお願いします。
写真提供:環境省